ホテルマン、香害について考えるーユニバーサルな場所とは

2020年9月22日

前回の masukoのこだわり:ホテル客室の消臭方法 、たくさんの方にご覧頂き、ツイッターでも初めて想定外に「いいね!」を頂き、とてもびっくりしました。ですがこの事により初めて、どれだけの方が香害に苦しみ、ホテルとしてどうすべきかを考えるきっかけとなりました。投稿後初めて気付いたので前回のブログはお恥ずかしい限りなのですが、これが自分にとってのきっかけであった事は間違いないので投稿はそのままにさせて頂きます。

まず前回のあらましですが、客室清掃で悩ませられる事の1つに「前のゲストが残した部屋のニオイ(香水、タバコ、etc..)」があり、それらの消臭の為オゾン発生器や消臭スプレーを使用しています、という内容でした。投稿後消臭に因んで調べていたら「香害」「化学物質過敏症」というワードやそれについて苦しんでいる方々の声を目の当たりにしました。

化学物質過敏症とは

私なんかが書くのはおこがましいですが、、この疾患については以前から知っていました。過去に化学物質過敏症のゲストからのリクエストに対応させて頂いた事があるからです。ウィキペディアによると、

化学物質過敏症(かがくぶっしつかびんしょう)とは、非常に微量の薬物や化学物質(主に揮発性有機化合物)の曝露であっても健康被害が引き起こされるとする疾病概念。2009年10月1日厚生労働省は化学物質過敏症を認め、病名をICD-10(国際疾病分類)の中毒の項(T65.9)に分類し登録した。人体の薬物や化学物質に対する各個人の摂取及び蓄積許容量を一定以上超えると引き起こされるとされており、解毒、代謝等の各個人の差も関わっているといわれている。化学物質の摂取及び蓄積許容量と同様に、発症原因および症状、その進行・回復速度や度合いも多種多様であるといわれる。一度発症すると発症原因となった化学物質に類似した化学構造の成分にまで症状が広がるケースが多く、症状を発する対象化学物質が雪だるま式にどんどん増加し、普通の生活が送れなくなるケースもあるため、多種化学物質過敏症または本態性環境不耐症とも呼ばれる。化学物質過敏症の症状は多岐にわたり、粘膜刺激症状 (結膜炎、鼻炎、咽頭炎、皮膚炎、中耳炎、気管支炎、喘息など)、循環器症状 (動悸、不整脈など) 、消化器症状 (下痢、便秘、悪心など)、自律神経障害(異常発汗、手足の冷え、易疲労性)、精神症状 (不眠、不安、うつ状態、記憶困難、集中困難、価値観や認識の変化など)、中枢神経障害 (痙攣、頭痛、発熱、疲労感、光を眩しく感じるなど) 運動障害、四肢末端の知覚障害、意識障害などがある。

ウィキペディア

認定されたのが2009年と、割と最近であると思いました。きっと以前からこの疾患に苦しんでいた方はいらっしゃったでしょうし、近年の強い香りの合成洗剤、柔軟剤のブーム、それを可能にしたマイクロカプセル技術の向上が拍車をかけたのだと思います。

香害とは

こちらもウィキペディアに頼りますが、下記のように説明されています。

香害(こうがい、かおりがい)とは、香水や、合成洗剤・柔軟剤・入浴剤・防虫剤・化粧品・芳香剤などに含まれる合成香料に起因し、頭痛やアレルギーなどの症状が誘発される、化学物質過敏症を生じる。香りの感じ方には個人差が大きい。不快感のみならず、咳・喘息や頭痛、吐き気といった身体症状を発する例もある。香り成分は空気中に漂うため受動的に曝露することになり、いわば香り成分による公害であることから「公害」をもじって「香害」と呼ばれるようになった。発生要因として、香料成分をマイクロカプセル化した残香性の高い製品や、洗濯時に香りが強く残る柔軟剤を使用することなどがある。

ウィキペディア

何故こんなに柔軟剤ブームになったのか。調べていく中で一番しっくりきたのが2018年のDIAMOND onlineの記事でした。

働く女性の増加とともに洗濯物の室内干しが増え、そのニオイに悩まされる家庭が増えた。香りつき柔軟剤を使えば、ニオイは消え心地よい香りが漂う。それがブームの引き金を引いた。香りは使い慣れると感じにくくなるため、「より強く、より長く香る商品」が次々に発売されていく。(中略)給料は増えず、ストレスの多い日々を送っている多くの消費者にとって、香り付き柔軟剤はさほどの金額をかけずに、癒しや元気を与えてくれる商品になった。

DIAMOND,Inc. 

各メーカーのCMも流石によく出来ています。私は元々柔軟剤を使わないのですが、今回「香害」を知るまでは私も気になる商品ばかりでした。

初めて「香害」を知って

お恥ずかしい事に、先述の通りブログを書いた事がきっかけで初めて「香害」という言葉・公害を知り、考えるようになりました。そうなると、この消臭の仕方は問題があるのではないか?と考えました。この事を知って、香水対策は壁の水拭きはマストだと改めて思いました。そして消臭効果のあるオゾン発生器の利用もすべきとは思いますが、密閉された空間でそのまま放置しておくと濃度が薄まらないので有害となるので換気もマスト。客室の消臭にはこの2つが必須ですし、消臭スプレーは振り撒くべきではないのでしょう。

ですが事実、オゾン発生後は独特のニオイが残ります。これを中和する為に消臭スプレーを撒いています。前回ご紹介した消臭剤は本当にオススメで、人体に害はなく、無香料タイプだとその通り香料が入ってないので大丈夫かとは思います。ですが化学物質過敏症のゲストが泊まられるお部屋の準備での使用は避けていました。在庫が切れた時は臨時で別メーカーの消臭スプレーを買っていた、と書きましたが、とんでもない事をしていた、と初めて気付きました。在庫が切れないようにしなくては、と反省。

また、ホテルによってはエントランスにて香りを発生させているところが多々あると思います。私が勤めた第3と第4の職場がそうでした。

ホテルとしてどうあるべきか、個人としてどう考えるべきか

現在、「サスティナブル=持続可能」がトレンドですよね。自然環境の維持に役立つ事業や、自然環境に配慮した行動を指しますが、特にファッション業界で顕著になってきた動きかと思います。素晴らしい事だと思います。だったら今私たちホテルは、「香害」についても考えていくべきなのではないか、香りをつけない事をトレンドというか、推奨していくべきなのではないかと思いました。エントランスの香りづけは、そのホテルにストーリー性を持たせる為でしょう。現に私の職場がそうでした。ですが過剰な香りに苦しんでいらっしゃる方がいるなら、その数が多い・少ないに関わらず、すべきではないと思います。

ホテルはユニバーサル(文化・年齢・性別・能力などの違いに関わらず、出来るだけ多くの人が利用できる事を目指した設計)であるべきだとも、個人的には思います。以前某ビジネスホテルがバリアフリーの客室を設置しておらず、「その部屋は売れないから」という発言が出た事で問題になった事がありました。その際、ワイドショーのコメンテーターの方が「バリアフリーという事は、誰でも使えるという事だ。全室バリアフリーでも良い訳だ。」と仰ったのが凄く心に残りました。現実、全室ユニバーサルルーム(今はこれかアクセシブルルームと呼ぶ事が多い)は難しいでしょう。ですがこの考えと同じで、誰でも居心地の良い空間をホテルは目指し、提供すべきだと思います。

「香り」を楽しむ権利は、誰にでもあると思います。しかし、公共の場所で他者にとって視覚的&聴覚的に不快であるかどうかは考えられるのに、受動的に嗅いでしまう「ニオイ」について考える人が少ないのは何故だろう、と初めて気付きました。また、私は化学物質過敏症ではないので、正直症状の辛さを「わかる」とは軽々しく言えませんが、辛さを想像する事は出来ます。例えば私は花粉症なのですが、スギ・ヒノキ・イネにアレルギーを持っており、その花粉が飛散しまくっている部屋に入れられたと考えると、、想像を絶します。他にもアレルギーを持っているのでそれを強制的に摂取させられる事を考えたり、肺が弱いので喘息になってしまったらどれ程苦しくなるのか、と考えたり、、人は、他者の苦しみを自分に置き換えて考えなくてはならないと改めて考えました。かく言う私も、この問題を知る今日までは寄り添えてなかったと思います。

私一人の声では組織に対してどうにもならないでしょう。ですが個人が一度考える事、声を出す事。まずはこれが大事だと思いました。そして出来るなら発信力のある人間になり、現状を変えていけるようになりたいです。

今回私に考える機会を頂けた事に、心より感謝いたします。



ホテル

Posted by masuko